母
母は、父が肺癌と診断されてから目に見えない速さでゆっくりと病魔におかされていった。
父の闘病生活中、今思えばおかしいな?と思うことがいくつかあった。
でもその頃は明確に気づかなかった。
おかしいと思えてきたのは、父が亡くなって間もなくだった。
そして、神経内科へ受診することにした。
やはり前頭側頭葉型認知症という診断がくだった。
進行性。
それが3年5ヶ月前。
それから、徐々にゆるやかに病状は進んでいった。
今や言葉がつくれなくなりつつある。
単語、片言なら喋れるが、文章にはならない。
いつも笑って話そうとするが、言葉がでず「あー、ちゃうわ。あーちゃうわ。」と笑いで飛ばす。
そして、黙り混こむ。
自分の気持ちを伝えたいのに言葉にならない。
でも、笑いで誤魔化しながらも明るく振る舞う。
そんな母を見ていたら悲しくなる。
寂しくなる。
可哀想になってくる。
今、出来る限りのことをしようと自分なりに頑張ってはいるが、
頑張れば頑張るほど来るべき時が来た時、恐ろしくなる。
母を亡くした時、どうなるんだろう?
最近毎日そんなことを考えてしまう。
私は、今、うつ病になってしまった。
仕事も辞めて週の半分は、母と暮らしている。
ひとりなら何もしないが、母が来た時は、簡単ではあるが食事を作り一緒に食べて時間を共有している。
そんな母ももう少しで84歳を迎える。
もう間もなく嫌でも別れなければならない日が来るだろう。
父で大切な家族を亡くした経験があるだけに、考えただけでも怖い。
でも、避けられない現実。
とにかく今は、少しでも症状が進むことを緩やかにして、1日でも長く生きていてほしい。